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【記録と数字で楽しむセイコーGGP2025】男子走高跳:世界大会入賞の真野&長谷川が東京2025世界陸上参加標準2m33に挑む。大阪金メダルのトーマスは「M40世界最高」なるか?
2025.05.06(火)
5月18日(日)に国立競技場で行われる「セイコーゴールデングランプリ陸上 2025 東京」。
世界陸連が、「コンチネンタルツアーゴールド」として開催する国際大会だ。
ワールドランキングにおいて「Aカテゴリー」に位置付けられており、順位に応じて付与されるポイントが非常に高いため、9月に国立競技場で開催される「東京世界選手権」への出場を目指す選手にとって非常に重要な大会である。
ここでは、現地観戦やTV観戦のお供に特に注目される種目について「記録と数字で楽しむGGP2025」をお届けする。
なお、原稿の締め切りの関係で、2025年シーズンの試合結果や情報は4月30日までに判明したものしか盛り込めていないことをお断りしておく。
また、記事の内容にはこれまでの各種競技会のこのコーナー(「記録と数字で楽しむ・・・」)で紹介したものもかなり含まれるが、データはできる限り最新のものに更新した。
・記録や情報は、原則として4月30日判明分。
・年齢は、2025年5月18日現在のもの。
・文中、敬称略。
※最新出場選手リスト(随時更新中)
https://goldengrandprix-japan.com/2025/athlete/
世界大会入賞の真野&長谷川が東京2025世界陸上参加標準2m33に挑む。大阪金メダルのトーマスは「M40世界最高」なるか?
2022年オレゴン世界選手権8位入賞の真野(しんの)友博(九電工/自己ベスト2m31=20年)、25年室内世界選手権4位入賞の長谷川直人(サトウ食品新潟アルビレックスRC/2m26=21年)が東京2025世界陸上参加標準記録の2m33に挑む。参加標準記録が有効となった24年8月1日以降にこれをクリアしているのは25年4月30日時点で世界で6名。8月24日の有効期限までに新たな突破者が何人かは出てくるだろうが、それほど多くはないだろう。よって、「出場枠(ターゲットナンバー)36名」のほとんどを1国3名以内でカウントした「Road to Tokyo」のランキングによって争うことになりそうだ。
4月29日時点での「Road to Tokyo」の日本人の順位は、23年ブダペスト世界選手権8位・24年パリ五輪でも5位入賞の赤松諒一(SEIBU PRINCE/2m31=24年)が10位、真野が18位、長谷川22位の3人でいずれも圏内。2m33以上をクリアできれば万々歳だが、ポイントを少しでも上乗せするために、1cmでも高く跳び、海外勢にも競り勝ってひとつでも上の順位をゲットしておきたいところである。
◆元バスケ選手で18年前の世界チャンプ、40歳・トーマスに注目!◆
海外勢は、前回のゴールデングランプリを2m30の自己ベストタイで制したユアル・リース(オーストラリア)、同じく2m30を24年に跳んだ葉柏廷(チャイニーズタイペイ)、そして18年前の2007年大阪世界選手権で2m35を跳んで金メダルを獲得したドナルド・トーマス(バハマ/2m37=16年)が参戦する。25年シーズンのベストは、リース2m20、葉2m15、トーマスが2m25だ。自己ベストと実績ではトーマスが断トツだが、84年7月1日生まれでもうすぐ41歳。2m30以上を跳んだのは7年前の18年が最後で全盛期の力はなさそうだ。といっても39歳の24年に2m28、40歳の今季も4月10日にドーハでの試合で2m25を、4月27日には2m28を跳んでいる。4月10日の試合では2m13にとどまったM・E・バルシム(カタール)を抑えて優勝している。
バルシムはご存知のとおり2010年代から世界の絶対王者として君臨。11年以降の世界選手権と五輪の11大会で金4、銀3、銅2、4位1、7位1とすべて入賞し9個のメダルを獲得している。4月10日がバルシムの25年初戦で何らかのトラブルがあったのかもしれないが、その絶対王者を40歳のトーマスが抑えたのは驚きだ。
トーマスにとっていい目標となりそうなのは、マスターズの「M40クラス(40歳~44歳)」の世界最高記録2m28を2m29以上に引き上げることだ。2m28は、2012年5月にD・トピッチ(セルビア/ベストは2m38=93年、当時の国籍はユーゴスラビア)が41歳の時にマークし、今年4月27日にトーマスがこれに並んだ。真野や長谷川らと競い合う中で2m29以上の「M40世界最高」が生まれるかもしれない。
トーマスが18年前の2007年大阪世界選手権で優勝した時のことをご存知でない方もいらっしゃるかと思うので、その経歴を補足しておく。
もともとはバスケットボールの選手で、高校生の時にはバハマの代表メンバーにも選出された。アメリカのリンデンウッド大学に留学してからもバスケットを継続していたが、プレー中に見せるそのバネは周囲の人を驚かせていた。
走高跳をやるきっかけは、こんなことからだった。06年1月、21歳のトーマスが「スラムダンクが簡単にできる」と自慢していたのを聞いた陸上部員から、「ならば、走高跳で勝負しようじゃないか」と挑戦を受けたのだった。そこで、トーマスは最初に1m98をクリアし、最終的には2m10を3回目に跳んだ。それを聞いた陸上部ヘッドコーチが、直後にイースタンイリノイ大学で行われた室内競技会にトーマスを出場させた。その大会で、2m22を跳んで優勝。それから1年7カ月後の大阪で「世界の頂点」に立ったのだった。この時は、2m33までの試技内容では4位の位置にいたが、2m35を1回で成功して1~3位が同記録の逆転優勝となったのだった。
真野と長谷川にとって、元世界チャンピオンとはいえ「M40クラスのマスターズの選手」に負けるわけにはいかない。真野96年8月17日生まれ、長谷川96年11月15日生まれでともに28歳。ハイジャンパーとして脂が乗ってきている年齢だ。
◆頭上50cmの空中戦を制するのは?◆
判明している身長は、真野が180cm、長谷川178cm。海外勢は、トーマスが190cmで、リースと葉は不明。数年前から、世界陸連も日本陸連も身長・体重のデータを公表しなくなったので上記の数字が現在のものとは限らないが、自己ベストと身長との差(抜きの高さ)を求めると、真野51cm、長谷川48cm、トーマス47cm。
上記は、身長との差での比較だが、立位の静止状態(気をつけの姿勢)での身体重心をどれだけ上昇させてバーをクリアしたかということで比較すると次のようになる。
「気をつけの姿勢」での身体重心の位置は、日本人男性の場合は、体型(脚長など)による個人差はあるが、「おヘソの少し下あたり(丹田のあたり)」で平均的には「身長の55.5%の位置」という研究がある。この「身長の55.5%」と「走高跳の記録」の差を比較し、「静止時の身体重心よりもどれだけ高く跳んだか」ということを比べてみた(トーマスの重心位置も身長の55.5%とした)のが下表だ。
身長 | 重心高 | 走高 | 差 | |
---|---|---|---|---|
真野 | 180cm | 99.9cm | 231cm | 131.1cm |
長谷川 | 178cm | 98.8cm | 226cm | 127.2cm |
トーマス | 190cm | 105.5cm | 237cm | 131.5cm |
いずれにしても、頭上50cmあまりで繰り広げられる「空中戦」に注目である。
野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)
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▼出場選手リスト
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【ワールドアスレティックスコンチネンタルツアー】
ワールドアスレティックス(WA、世界陸連)が主催するダイヤモンドリーグ(2025年は15大会指定)以外の世界最高となるOne-Day 競技会のシリーズです。コンチネンタルツアーは世界各地で開催され、ゴールド、シルバー、ブロンズ、チャレンジャーの4つのレベルに分けられ、これらのレベルは、競技会の質と提供される賞金によって決まります。本大会が位置付けられているWAコンチネンタルツアーゴールドは、2025年は世界で13大会のみ指定され、WAのワールドランキングのカテゴリー(格付け)で日本選手権(Bカテゴリー)より上位の「Aカテゴリー」に位置付けられており、東京2025世界陸上競技選手権大会への出場資格獲得を目指す海外、国内のトップアスリートにとって、ワールドランキングを向上させるために、重要な競技会です。

【アーカイブ】セイコーGGP2024
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